Amies Philosophy ー世界観ノ創造ー

世界は物語。物語は雲。世界観の創造は水を雲にすること。世界観は入道雲のように空高く。

人間らしさ。

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 石。

あの石は本当に石なのか。
我々の意思が介入しない客観的な存在なのか。
意味で覆われた石ではないか。

石を起点に生ずる連想が石の姿を覆い隠す。
人の目には石が意思に映っている。

意味のないものは認知できない。
意味のないものは現実でない。

人は現実感を得る為に意味で物事を覆う。

 

 

意味の渇望

なぜ我々は意味を必要としたのか。非現実的な現代の中でリアリティを味わいたかったのか。非物質的な観念に実体と同じ感覚を覚えたかったのか。自然淘汰を生き残る一つの戦略として「協力」がある。その協力には非物質的な「観念」を信じることが前提となる。故に協力という戦略を選んだ人類にとっては「虚構」を信じる能力が不可欠だったに違いない。

 

生存戦略

裏切りには裏切りで対抗しなければならない。自然淘汰の世界では信頼は無価値で何の役にも立たない。信頼とは裏切らないことを前提に行動するからだ。裏切れられれば即自然淘汰により消滅を迎える。よって「相手は裏切らぎる者」という考え以外の発想がないため、彼らの脳に意識的性質は内在しない。その弱肉強食の世界の中で協力という戦略を選んだ種族は稀な存在である。なぜなら協力を前提にするものは一方的に裏切られて絶滅するからだ。従って、協力だけの手段を選ぶことは悪手であり、即座に淘汰される。だから戦略として協力を駆使するのなら、協力には協力を、裏切りには裏切りをという状況に応じた高次的思考戦略が求められる。

 

虚構の実体化

裏切りには本能、協力には理性で報いるという高次的戦略をとることで人類は生物界を遍く侵略していき、今ではその中の頂点である。それにより周囲を人類本位の環境に変えていき本能という不確定で予測できない危険な要素を排除していった。そうして常に理性を必要とする社会が形成され、本能を悪として裁く理性至上主義思想が常態化していった。理性とは協力の要であり、よってそれは虚構を信じれる能力のことである。理性が常態化した人類にとって、虚構に実体があるという無意識的感覚は当たり前すぎて気にも留めない。

我々が実体として捉えてしまっている虚構の正体こそが全ての物事の観念、つまり意味であり、その意味は認識対象が物質・非物質に関係なく我々の意識を侵食していった。そもそもこの物質世界では非物質の存在が不可解であり、それも全て虚構を信じれる能力が生んだ賜物である。

 

複雑な思考

虚構を信じれるようになった人類の思考は複雑性が増すことで多様化していった。多様な思考には常に膨大な選択肢の中から一つ選ぶという処理が要求され、その思考の処理構造によって私とそれ以外の立場を区別して考えれるようになった。主観と客観である。

 

主観と客観。

思想に選択肢がある時
主観的であると言える。

一方選択肢のない思想は
自我と切り離された不自由な状態の為
客観的であると言える。

思想の選択の自由が
主観と客観を切り分ける。

思想は意識の選択の連続。
故に我々は主観的。

客観的な立場には
選択の自由があってはならない。

 

この観点をもつことで思考の複雑性は更に加速していく。非物質である意味が膨大に増殖し、その意味が物質の中へ侵食していった。

 

入れ子構造。

客観的に考える。
己では制御が届かぬよう距離を置き
客観的実体とする。

その客観的実体に意味を持たせ
主観的虚構に取り込む。

その主観的虚構から距離を置き
再び客観的実体とする。

その実体に意味を付与し主観的虚構に・・・。

不可逆的な意味の増幅。
連鎖的で止まらぬ妄想。

 

こうして入れ子構造となった意識は不確実で予想もできない深淵な真理として「心」と表現されるようになった。

 

人類の使命。

我々人類は心という曖昧なモノを携え生を受けた。

その曖昧さは
人類の叡智を超えた存在であるが故の
我々ができる精一杯の見解。

心とは深淵なる真理。
未だ解明の兆しを得ない。

人類はその奇怪を抱え生きている。
我ら本能の摂理により
黄昏はコレが明かされんことを欲する。

 

神秘性が一層強くなった心という概念は常に成長し続け、人類の好奇心と叡智が結集させたなら、いつか解明される日が来るのかもしれない。

 

リアルな世界

我々が見る世界は意味で侵食されてしまっため、実際のリアルな世界から乖離してしまっている。そしてそのことは虚構を前提とした意識では気づくことができないが、そこに埋もれた本能の叫びが分厚い意味の膜からにじみ出てくる。それが得も言われぬ不安となって心を締め付け、リアルな世界を渇望するのである。やがて、心が心を騙すようになってからその不安は鳴りを潜めたのだった。

 

リアル。

あれはハルジオン。

地から吸い上げられた水の束柱は
太陽の光できらきらと輝いている。

断面から伝わる維管束の脈動が
生命の音を奏でる。

風に吹かれて歳差で揺れ動く髄。
根の踏ん張りが大地に力を逃がし
髄の所作が穏やかな風となる。

空虚な部屋の中で
リアルなハルジオンを見た。

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