Amies Philosophy ー世界観ノ創造ー

世界は物語。物語は雲。世界観の創造は水を雲にすること。世界観は入道雲のように空高く。

宇宙が語った情報の終焉

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宇宙内部系多様化の歴史

無限から有限の誕生

我々が存在しているこの宇宙構造はエネルギー形態の一面のにすぎない。外の住人はエネルギーにいくつかの簡易的な物理法則を与え、宇宙を生んだ。最初は個性的な素粒子が数種類生まれる。その素粒子は個性があれど多様性には程遠いものがあった。

 

有限から無限の誕生

人の感覚からすれば限りなく短く、物理的感覚からすれば限りなく長い刹那の時間の中、素粒子は物理的法則の範疇で協調できることを知った。そして原子を生んだ。原子の種類は有限ではあったが素粒子と比べれば多様性の面で魅力的であった。そして何と言っても、原子の誕生で最も画期的なのはその原子は同種異種関係なく結合できることだ。そしてこの宇宙に無限の概念が生まれた。*1

 

宇宙の多様化

宇宙が誕生して138億年間、宇宙が歳を重ねるに従いその組み合わせ数は増大していった。初めは原子の種類を増やした。そこで使用した装置は我々が星と呼ぶものだ。限られた物理法則の中で核融合反応を用いて原子の種類を増やしていった。鉄より重い元素は超新星爆発を利用して生成した。そういった努力の甲斐あって、原子の結合で生まれる単体や化合物により、これまでにはない速度で加速的に多様化が進んだ。

 

宇宙多様化の加速

これまで粒子としての情報形態をとっていたものが、結合と言う新たな情報形態をとることで、一時は停滞していた多様化は再び加速した。これが生命の誕生である。結合と言う情報形態の優れたところは限られた空間の中で数多のパターンを生むことができるということだ。原子種類や数が増えるに従い、結合にも数多のパターンが生まれ、それは驚くほど空間を節約できる。宇宙と言う限られた空間ならではの発明だ。宇宙も系内部で増え続ける多くの情報を保管するために必死に膨張してきたが、結合と言う発明のお陰で膨張の速度を緩めることができた。

 

宇宙情報の保管

宇宙が内包する情報の増大

宇宙内部の多様化は情報の増大と言い換えることもできる。*2宇宙が誕生してから今まで、宇宙内部ではいろいろなパターンが生まれて続けている。そしてそのパターンがまったく同じだったことは一度もない。局所的に観測すれば同じ状態と思えることも、宇宙全体の系で考えれば同じとは言えない。なぜなら宇宙が体積が同じであったことは一度たりともなく、そして宇宙内部の全原子の配置が全く同じになりえないからだ*3。したがって、宇宙内部では時間の経過とともに様々な情報のパターンが生まれており、情報の増大は一向に留まる気配を見せない。宇宙が収縮方向に転移したとしても、結合と言う情報形態をとれる環境がある限りは情報の増大は健在である。

 

膨大な情報の記録

ただ懸念することがある。その日々生まれる情報はどこかで卒なく記録されているのだろうかと。宇宙内部の多様化を記録できるのもやはり多様化された装置であることは異論はないだろう。そして一つ、私はその装置に心当たりがある。それは、脳だ。脳も同様に多様化可能な神経細胞の結合システムを持ち、その神経細胞ネットワークのパターンにより多様化された外部情報を記録できるという訳だ。ただ、宇宙内部で生成される情報を宇宙と比べたら限りなく小さい脳の中に圧縮できるのだろうか。脳の空間も甚だ矮小で限られているのだから、あるところで必ず物理的限界がやってくる。情報が限界まで圧縮され高密度化した脳の神経細胞間の結合は有限の空間を余すことなく使用しているに違いない。そこに無限のパターンは生じ得るのだろうか。

そもそも宇宙と言う限られた領域内で、且つ今という止まった状態の中で無限のパターンは存在しない。そういった時の無限とは可能性でしか語れない。未来は未知であるが故に、時間は無限に経過し続ける。よって、可能性は無限だということになる。そういった意味で、現在の脳の構造で宇宙系の全情報を脳に圧縮するのは困難かもしれないが、脳を物理的に大きくすれば可能になるかもしれない。もしかしたら情報記録装置の飛躍的発展により、宇宙全体の情報を脳程度の空間に圧縮できるようになるかもしれない。可能性としては今こうして想像できているのだから0ではないのだろう。

 

宇宙の物理法則と情報

情報の圧縮と解凍

宇宙が持つ情報の中には我々の知り得ない未知のものがまだまだ内在しているのだろう。それを知ってか知らずかは解らないが情報は日々増え続けている。ただ、情報の素晴らしいところは、記録者即ち観測者の想像力が優れていればいるほど、情報量は少なくて済むということだ。無知であれば、宇宙から届く光のメッセージから情報を一つとして読み取ることはできまい。知っていれば、その光を包括的に解析することにより星の特徴といった様々な情報が得られるのに。よって、宇宙の歴史ともいえる宇宙情報の記録者として、想像力に優れたものであることは必要条件である。そこには宇宙を支配する法則を全て理解しているということと同義的な意味が込められている。要は必要最小限の情報から全てが想像できる、そしてその想像が現実と寸分違わぬことが重要である。そうであれば未来は予知できずとも宇宙全体の情報を最小の情報に圧縮し保管することができる。そうすれば、空間も節約できるというものだ。圧縮した情報を解凍したいのであれば、この宇宙に与えられた万物を支配する物理法則を暗号キーとして使えば正確に解凍できるという訳だ。

 

情報から考える物理法則とは

我々は知らない。既に宇宙全体の情報を記録する装置があることを。その装置がもつ情報が少ないが故、それが記録装置であることすら解らないでいる。それは当たり前だ。今だに物理法則を完全に紐解けていないのだから。暗号キーを手に入れるまで、その装置を作ることも使うこともできない。物理法則とは那由多に存在する情報の圧縮、または圧縮された情報の解凍を実現できる一種の道具である。

 

未来予知で失われる時間と未来

未来予知は不可能

我々は知らなければならない。時間的概念の中に内包する可能性を認める限り、全知は存在しえないことを。未来は無限に存在し、現在とは、これまで通過してきた過去にとっての未来にある可能性の一つに過ぎない。いくら全宇宙の全てを把握したとしても、未来を厳密に読むことは決してできない。未来とは、人が創り出した時間的概念という虚構から生まれた可能性の世界の話なのだから。

 

未来予知は情報過密化を生ず

即ち、「未来は可能性や未知と同義である」ということを知らなければならない。そして我々が到達できる極限は、最小の情報から最大の情報を読み解くことぐらいだ。従って、時間の生み出す矛盾に惑わされてはいけない。未来予知ができれば可能性は無くなり、未知もなくなる。未来と過去は、今という一点に圧縮される。それは宇宙のありとあらゆる事象が今に重なっている状態だ。情報密度が臨界状態となり、やがて崩壊する。それは1÷0の無限に続く計算を一瞬でさせるようなものだ。時間的概念が無くなる状態、即ちブラックホールと同質の状態である。情報のブラックホールは情報過多により生じる成れの果ての現象だ。

 

時間的概念の終焉とき

未来を予知しようと情報を集めた結果、情報が過密になり、ブラックホールを形成し、そして時間が失われ、それと同時に未来という概念も失われる。これが情報過多による時間的概念が終焉するシナリオ。情報がブラックホールと化した時、物理法則が破綻し、情報を読み取る暗号キーが失われる。そうして凝縮した情報は読み解くことのできない情報、即ち情報としての価値を失うのであった。

これは宇宙の理だ。

*1:無限とは、無限の組み合わせという意味である。

*2:ここで多様化の定義について触れるが、多様化とは宇宙誕生から今までの時間幅で生まれたパターンも考慮している。

*3:このことは、物理的法則が少ないが故に日々自由に変化(進化)できるこの自然界を見れば一目瞭然であろう。

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